意地悪な兄と恋愛ゲーム



「ゲームはまだ終わってないよ」


 晴斗のカレンダーを覗くと、期限は今日までになっていた。


「今は11時半を過ぎたところだから、本当ギリギリだったね」と、晴斗はニッコリと笑みを深めてくる。


「美咲が俺の事を少しでも好きになっていたら、その時は一生離してなんかやらないから、そのつもりで」


 馴染みのあるその笑顔を久しぶりに見たような気がして、美咲は固まってしまった。


「これ、覚えてる?最初に俺が言ったセリフだよ?」


「晴斗…」


「覚悟は出来てる?俺、普通の恋人になるだけじゃ満足なんてしない」


「それって…」


「俺の愛が重いのは知ってるでしょ?ただ付き合うだけじゃ許さない。一生美咲を側に置くから」


「…っ、晴斗…!」


 美咲は思わず晴斗の首に抱きついた。


「そんな言い方ズルい。晴斗はやっぱり意地悪だよ!」


 晴斗はクスクスと笑って、美咲をゆっくり抱きしめ返してくる。


「大好きだよ、美咲。絶対離してなんかやらない」


「私もだよ。しつこいくらい側に居て」


 美咲と晴斗は一旦身体を離すと、互いに見つめ合った。

 晴斗が美咲の頬に指を寄せ、そのまま引き寄せられるように二人は唇を重ねる。


「…ん」


 久しぶりに味わう晴斗の甘い唇。

 あの頃よりも、甘さが増しているように感じて、なかなか唇を離せない。


「…っ」


 鳴り止まないリップ音。

 無意識に絡まる指と指。

 晴斗が私を求めている事が伝わって、身体の芯から、じんわりと温かな幸福感が降りてくる。

 私、こんなに幸せでいいのかな?

 こんな夜空の下で、こんなに愛しい人とキスが出来るなんて…


「…美咲、泣いてるの?」


 晴斗は、美咲の頬が濡れている事に気が付いた。


「……だって、もう全部が遅いと思ってたから。晴斗はもう私に愛想をつかしちゃったって。もう、晴斗を諦めなくちゃいけないって」


「美咲…。泣かないで…」と、晴斗は優しく美咲の涙を拭うと、その跡にキスを落としてくれる。


「晴斗ならすぐに、恋人が出来ちゃうから」


 晴斗は目を丸めた後、クスクスと笑った。


「俺、美咲以外、誰も好きになる気がなかったよ」


「え?」


「美咲と一緒になれないなら、一生独身でいるつもりだったし」


「そうなの?」


「そうだよ。さっきも伝えた通り、美咲は俺にとって唯一無二の星だったから」