意地悪な兄と恋愛ゲーム



 晴斗の声は夜風に乗って、澄み渡る夜空の海に静かに響く。


「美咲はいつも、あの星みたいにずっと遠くで輝いていて、俺はどうしても手に入れたくなった。こんなに広い宇宙で、同じ星なんか一つとない。俺の目にうつる美咲は、どんな星よりも輝いて見えたよ」


 胸の奥が、切なくて苦しい。


 今までずっとそんなふうに、私を想い続けてくれていた晴斗が、恋しくて堪らなくなった。


 私、やっぱり晴斗が好きだよ。

 どうしようもなく好き。

 晴斗じゃなきゃ嫌。

 晴斗がいいと、全身が叫んでた。


 このままじゃ、終われない。

 この人を前にして、この気持ちをなかった事になんて、そんな事出来っこない。


 罰が当たってもいいから、晴斗に今、届けたい…


 黙ってしまった美咲に気が付き、晴斗が顔を覗きこんでくる。


「美咲、どうかした?寒いなら、そろそろ部屋に…」


「…き、だよ…」


「え…?」


「私、晴斗が好き…」


 晴斗の顔を真正面から見つめて告げた。

 これが、嘘も偽りもない本当の気持ち。

 いつからか、ただの好きさえも通り越していた、愛おしいという気持ち。

 ずっと伝えたくて堪らなくて、それを解放できた今、スッと胸の奥が楽になった。


「なかなか言えなかったけど、晴斗の事が好きなの」


 晴斗は薄い唇を静かに開いた。


「知ってる…」


 意外な返答に美咲は目を見開いた。


「えっ、いつから…?」


「今日、颯真から聞いた」


「先輩が?」


「俺、人の気持ちに気付くのは鈍感なんだって」


「ごめん。色々、傷つけた」と晴斗は謝罪を口にする。


「じゃあ、晴斗、私と…」


「でも俺、美咲とは付き合えない」


 はっきりと告げられて、胸の奥に衝撃が走った。


 晴斗の気持ちはもう分かってた。

 分かってたはずなのに、一瞬でも一緒になれるなんて、どうしてそんなバカな勘違いをしちゃったんだろう。

 
 もう前とは違う。

 とっくに立場は逆転してる。


 今すぐに逃げ出したいよ。

 だけど、大泣きするだけのちゃんとした理由が欲しかった。


「もう、付き合ってる人がいる?」


 美咲の質問に、晴斗は首を横に振った。


「新しく好きな子が出来た?」


「ううん」


「じゃあやっぱり、真由ちゃんが高校生になるのを待って、付き合うつもりなんだ?」


「違うよ」


 思いきり私を傷つけてほしいのに、晴斗は否定ばかりだった。


「私は晴斗にとって、ただの妹に戻ったって事なんだね」


 1ヶ月の期限はとうに過ぎて、結局私達は両想いになれなかったから。


 だけど、「それも、違う」と、晴斗は自分の携帯のカレンダーを見せてきた。