意地悪な兄と恋愛ゲーム



 星について語った後、美咲はテラスの窓枠に腰かけて落ち着いた。


 晴斗は部屋の中から、自分の毛布を持ってくると美咲の肩にそっとかけてくれた。


「これ、使って?」


「いいの?晴斗も寒いでしょ?」


「俺は寒くないよ。美咲こそ、風邪をひいたら大変だから」


晴斗の毛布にしっかりと包まると、晴斗の優しい香りがした。


「でも、晴斗の方が寒がりじゃない?」


 晴斗は美咲の隣に同じように腰をかけると「俺?」と意外そうな顔をした。


「私の中の晴斗って、雨に打たれていつも寒がってるイメージ…」


「それ、全然男らしくないな…」と、晴斗は少し不満顔。


 その表情はいつも余裕な晴斗らしくなくて、美咲はクスリと笑ってしまった。


 晴斗はそんな美咲の横顔を見て、ニコリと笑う。


 ほのぼのとした温かな空気が、二人の間を流れていく。


「ねぇ、晴斗?」


「ん?」


「晴斗は最初、どうして私を好きになってくれたの?」


「どうしたの、急に」


「ただ、聞いたことなかったから聞いてみただけ。深い意味はないの」


 晴斗は少し黙ったあとに「内緒」と言った。


「な、何で!?」


「すごく大切な思い出だから」


「思い出?私、晴斗と思い出なんて、いつ作ったっけ?」


 晴斗は「はぁ…」と、あからさまなため息をついて返す。


「本当に美咲は、無自覚だね」


「えっ?」


「図書室で一目惚れしたって教えといてあげる…」


 耳打ちをするように囁かれ、美咲は驚きのあまり身体をのけ反らした。


「ま、待って、一目惚れ?晴斗が私に?嘘でしょ?何の冗談!?」


「……そんなに驚く事?」


「お、驚くよ!一目惚れなんて言われたら普通、誰だって驚く。見て?この顔だよ?この顔のどこがいいの?他にも目を見張るような美人がこの世にはわんさかっ……」


 そこまで叫んだ時、晴斗は自分の唇に人差し指を当てた。


「……美咲の声、近所に筒抜けだよ?」


「ごっ、ごめん…」と、冷静さを取り戻し、一旦座り直して俯く。



「美咲は可愛いよ…」



 突然、空から降ってきたような呟きに、美咲は目を見開いた。



「美咲の変わりなんて、世界中探したって、どこにもいないんだよ?」