意地悪な兄と恋愛ゲーム



____その夜


 約束をした10時に、美咲は晴斗の部屋のドアをノックした。

 けれど応答はなく、ドアを開くと、部屋の中は真っ暗だった。

 ただ、テラスに続く窓ガラスが開かれたまま、カーテンが風にサラサラと揺れている。 


 美咲は室内に入り、そっとテラスを覗く。

 晴斗は手すりに手をかけて空を見上げていた。

 夜風が、晴斗の黒髪をサラサラとくすぐる。

 そんな晴斗の姿に、美咲はしばらく見惚れてしまった。


 晴斗は美咲の気配に気がついたように振り向くと「待ってたよ」と微笑んだ。



「今夜は一緒に、星を観よう」



 この笑顔は、反則だよ。

 今が夜で本当、良かった。


 美咲は、密かに染まる頬と高鳴る鼓動を抑え込むように、胸にギュッと手を当て、隣に並び、既に深まった夜空を見上げた。


 澄み渡った空にはもう、沢山の星が瞬いている。


「……秋の空って、こんなに星が出てるんだね」


「秋の夜長って言うでしょ?秋の夜空は一番、天体観測に向いてるから」


「そうなの?」


「例えば春は、せっかく晴れてもガスや花粉で空が霞むから、ここまで綺麗に見られる日は少ないんだよ」


「そっか、じゃあ今は季節的にいい時期なんだ」


「うん。さっそく観てみようか?」


 晴斗はそう言って、側にセットされてある望遠鏡を美咲に覗かせてくれた。


 こうして始まった二人きりの天体観測。

 美咲は晴斗といられる貴重なひと時を、噛み締めるように過ごした。


 時折、胸の奥が切なく疼く。

 晴斗は今、何を思ってるんだろう?

 私は正直、目の前で煌めいている星よりも、晴斗の横顔を見ている方が幸せだって感じてる。


 もっと早く、気がつけば良かったこの気持ちに蓋をした。

 そしたら、涙が零れそうになるから、なかなかレンズから目を離せない。


 霞んだ瞳で見る星は、宝石のような輝きを放っていて、美咲を励ましているかのようだった。