「どうした?」と優香の不思議そうな視線に、颯真が気がつく。
「あ、いや〜。いつの間にか、あの頃と逆転してるなーって、びっくりしちゃって…」
「あぁ、だよな。俺、この前美咲ちゃんに会った時、告白しちゃったんだよ」
「えぇっ!せ、先輩、美咲の事、本当は好きだったんですか!?」
周りに届くような優香の声に、美咲はドキリとした。
「さすがに驚くよね。でも、美咲ちゃんにはもう、気になってる人がいるみたいだから」
「えっ、そうなの?美咲」
「う、うん」
「誰っ?私の知ってる人?」
「それは…」
「美咲ちゃんが言えないなら、俺が当てようか?」と、颯真はニコニコと笑う。
「えっ」
「晴斗でしょ?美咲ちゃんの好きな人」
美咲は戸惑いながら、コクリと頷いた。
「ほら、やっぱり。あの日、何となく分かったよ」
「み、美咲!晴斗って、うちの学校の晴斗先輩が好きなのっ!?」
「ゆ、優ちゃん、声が…」
「だ、だって、美咲、晴斗先輩の事、めちゃくちゃ嫌ってたじゃない!?」
「うん。色々、事情が変わって…」
「そうなんだ…。晴斗先輩かぁ。応援してあげたいけど、ライバル多過ぎるよ?美咲もよぉーく、知ってるでしょ?」
「それがさ、俺、晴斗とはサッカーで仲がいいんだけど、晴斗の方も、まんざらじゃなさそうで…」
「どういう事ですか?詳しく聞かせて下さい!」
「いいんです!」と、美咲が叫ぶと、二人は黙ってしまった。
「確かに、私が好きなのは晴斗です。でも、もういいんです…」
「美咲?」
「なんかもう全部、遅かったみたいで、駄目みたいです」
美咲の震えるような声に、優香は黙ってしまう。
代わりに、颯真が口を開く。
「美咲ちゃん、駄目って?」
「違う人との恋、応援されちゃって。私、諦める事にしました」
「諦めるって、美咲の想いは伝えたの?」
美咲は首を横に振った。
「じゃあ、まだ早くない?何も伝えてないんでしょ?」
「いいの。私はずっと晴斗を嫌ってたから、晴斗を傷つけてたから、今更好きだなんて、そんな都合の良い事言えないよ」
美咲からついに、涙が溢れた。
「美咲…」
あぁ、ずっと我慢してたのにまだ駄目みたい。
諦めようと努力してるのに、晴斗が頭から離れてくれない。
悲しい、苦しい。
だったら、嫌いなままでいられたら良かった。
そう思う事も、今更虚しくて…
「ごめんね、二人とも…」
美咲は二人に謝る事しか出来なかった_____

