意地悪な兄と恋愛ゲーム



「ごめん、遅れて…」


 その時、男の人の声がして、美咲は振り返った。

 現れたのは、颯真だった。


「先輩!」


 颯真も美咲がいる事に驚いたが、その顔は笑顔だった。


「あれ、美咲ちゃん。どうしたの?今日は」


「先輩こそ、どうして?」


「俺は、優香に呼び出されて…」


「私も、優ちゃんに誘われ…て…」


 二人同時に優香を見る。


 優香はニマニマと頬を緩めた。


「二人とも久しぶりに会いたいかなと思って、今日は私がセッティングしたの」


 そうだ、優ちゃんは私が先輩と、この前会った事知らないから。


「優ちゃん、あのね、実はこの前先輩とは偶然会ったばかりなの…」


「えっ!そうだったの!?」


「うん。色々懐かしい話もして。ごめん、優ちゃんには言ってなかったよね」
 

「あちゃー!私、余計な事しちゃったかな?先輩、部活忙しいのに、ごめんなさい」


 優香は額を押さえた。


「ううん。俺はまた美咲ちゃんに会いたいと思ってたから全然いいよ。むしろ、優香に感謝」と、颯真は嬉しそうに美咲の隣に腰を降ろした。


「美咲ちゃんさえ嫌じゃなければ…」


「先輩…」


 戸惑う美咲に、嬉しそうに視線を合わせる颯真を正面から眺めた優香は、驚いたように目を見開いた。