「ね、ねぇ?」
「ん?」
「あ、あのさ…」
「何?」
「えっと…」
「どうしたの?」
「あっ、あの子!晴斗の事、大好きなんだね!」
駄目だ、言えない…
恥ずかしすぎる。
晴斗もあの子も、息をするように自分の気持ちを伝えられるんだから、本当にすごいよ。
「あぁ…、真由ちゃんね」
「会えなかったら淋しくて死ぬなんて、なかなか言えないよね。言われて嬉しかった?」
「別に…、何の感情もないよ」と、感情たっぷりの笑顔が返ってきた。
「美咲になら死ぬまでに一度くらいは言われてみたいけど?」
「ば、バカ!」
バカって…
私もあの子くらい、可愛く喜べないの?
「それを言うなら颯真だろ?中学の時、実は颯真も美咲を好きだったって…」
「あれは、その〜」
意外だった。
中学の時の私、ううん、最近までの私なら手放しで喜んだかも知れない。
だけど今の私は、晴斗の反応の方が気になってしまう。
私みたいに晴斗だって、異性に好意を寄せられている私に、嫉妬してくれてたらすごく嬉しいのにって…
「良かったね、初恋実って…」
「え?」
「追いかけたら?ずっと、好きだったんでしょ?」
身体に、ズシンと衝撃が走った。
何、今の?
晴斗が、言ったの?
足を止めた美咲に、二、三歩先を歩いた晴斗も足を止めて、振り返る。
「初恋って特別だし、今行かないと後悔するよ」
晴斗はいつもと何も変わらない表情だった。
嫉妬とか、そんな可愛いものじゃない。
本心から言ってる事が分かって、一瞬目の前が絶望感で真っ暗になった。
「何で急にそんな事言うの?」
本当に、その唇が言ってるの?
「何でって、美咲には後悔して欲しくないから」
私じゃない。
晴斗だよ。
「晴斗は本当に、それでいいの?」
今ならまだ、間に合うから…
「颯真も美咲も大事な人だし、二人が結ばれて幸せならそれは俺も嬉しい」
そんなふうに、言わないでよ…
「そっか…」
駄目だ。
ボロボロ。
好きとか言える雰囲気じゃない。
だって、晴斗の気持ちがどこにあるのか分からなくなった。
静寂が流れて、晴斗から口を開いた。
「……俺、最近ずっと思ってた。そろそろ恋愛ゲームは終わりにして、普通の兄妹に戻ろうかなって」
「…じゃあ、うん…。私今から、先輩のとこ、行ってこようかな…」
「うん、行ってらっしゃい」
美咲は少し走った先で足を止めた。
「笑顔、だった…」
応援、されちゃった。
「普通の兄妹に戻ろうかな、だって」
いつから、そんなふうに思ってたの?
どうして、追いかけて来てくれないの?
私の初恋が実って良かっただなんて、どうしてそんな事簡単に言うの?
今更になった質問ばかりが頭の中をかき乱す。
その場にうずくまって、膝を抱えた。
堰き止めていた涙が、一気に流れてアスファルトに染み込んでいく。
「まだ、何も言えてないのに、ふられちゃった…」
全部、全部、遅かったんだよね。
私がもっと早く素直になれてたらこんな事にならなかったかも知れない…
だけど、それを確かめる勇気も今の私には持てないよ。
「晴斗に会いたい…」
言葉にしたら想いが増して、
「晴斗しかいらない…」
胸を絞るくらいに苦しめてくる。
それくらい、私は晴斗を好きになっちゃったんだから……

