帰り道を二人で歩く。
じきに夕方から夜に変わる。
街灯には明かりが灯り、目の前には薄い闇が広がっている。
思えば、晴斗と一緒に帰るのは二度目。
一度目は、停電で街灯の明かりも灯らない真っ暗な中、二人で大雨に打たれて余裕なんてなかった。
今回は、こんなに静かな夕暮れなのに、隣に晴斗がいるっていうだけでソワソワと落ち着かない。
いつもはここぞとばかり喋るくせに、どうして今日に限って黙るのか。
そんな事されると調子が狂う。
「あのさ、晴斗?」
「ん?」
「言いそびれてたんだけど、この前の夜はありがとう。雷の日、色々心配かけたし、その、ずっと側にいてくれて…」
「美咲が暗闇と雷が苦手になったのは俺のせいでもあるんだし、お礼なんて言わなくてもいいよ」
「それでも、私は救われたから」
「美咲…」
「あの日、晴斗が部室まで駆けつけてくれなかったらどうなってたかって考えるだけでゾッとする。それに、熱中症で倒れた屋上の時もそうだよね!思えば私、晴斗に助けてもらってばかりかも…。いつも偉そうにしちゃうけど、これでも感謝してるんだよ」
「どうしたの?急に。頭でも打った?」
晴斗は足を止めて、感謝を述べる美咲に驚き、目を見開いている。
「それとも熱があるの?見せて?」と、顔に指が伸びてきて、美咲は慌てて遮った。
「だっ、大丈夫だから!晴斗、失礼だよ!私だってお礼くらい言えるんだからっ」
「うん。部室で俺に見つけてもらえた時、美咲はほっとしてたよね。たくさん泣いてた…」
「恥ずかしいな。もう忘れてよ」
「忘れないよ。たぶんずっと…。好きな子にあんな怖い想いをさせた自分への戒めとして」
「何それ、意味わかんない」
晴斗は機嫌が良さそうにフフ…と笑うから、美咲も勝手に頬が緩む。
「あ、そうだ、これ。私の消しゴムなんだけど…」
美咲はポケットを探って、ウサギの形をした消しゴムを晴斗に差し出す。
「耳のところ、少しだけ使ったけど、まだ新品みたいに綺麗だよ」
「これって…」
「晴斗と前に約束したでしょ?私物をもらう代わりに私物をあげる。晴斗がウサギの消しゴムを持ってると思うとちょっとだけ可愛いでしょ?」
晴斗は黙って、それを受けとった。
「やっぱり嫌だった?」
「違うよ、嬉しい。ありがとう、大切にする」
再び、歩き出す。
さっきより少しだけ、距離が縮まったみたいに感じるのは私だけかな?
腕のところ、同じブレザーの生地が触れ合うのが気になってしまう。
あ、晴斗に触りたい。
手、繋ぎたいな。
芽生え始めたこの気持ちが、確実に大きくなっていくのが分かる。
程よい緊張と幸福が、トクトクと温かい。
この気持ち、いつ伝えよう。

