意地悪な兄と恋愛ゲーム



「気持ちの大きさなんて、天秤にかけるものじゃないと思うな……」


 颯真はアイスティーをかき混ぜながら言った。

 氷がストローに押され沈み、また浮かび上がる。


「自分自身、失ってから初めて、その気持ちに気付く事だってあるんだし…」


 そう言って、アイスティーを見つめる颯真の顔は、少し寂しそうにも見える。


「これはあくまで俺の考えなんだけど、恋ってね、もっと単純でいいと思う」


「単純?」


「うん。ただ、その人といると楽しい、ドキドキする、幸せな気持ちになる。だから自分も同じだけ、相手を幸せにしたい、大切にしたいって思う。それが恋。美咲ちゃんには、そういう人がいる?何よりいつも、笑っていて欲しいって思う人は?」



 晴斗の笑顔が、頭に浮かんだ。

 その顔が悲しみに歪むとき、自分の胸が締め付けられるくらい苦しくなる事も知っている。


 いつからだったろう。

 私が見たいのは、晴斗のそんな傷ついた顔じゃなくなっていた。

 私が、笑顔に、幸せにしてあげたいと思うようになっていた。



「……いるかも、しれません」


 霧が晴れていくように、モヤモヤとしていた自分の胸の中が、気持ちよく澄んでいくのが分かった。


 本当は、雷も停電も関係ない。


 私は純粋に、心から、


 晴斗の事が大好きなんだ___
 


「じゃあ、答えは簡単。っていうか、美咲ちゃん、分かりやすいね。気づいてる?さっきからずっと、ほっぺた赤いよ?」


「えっ、本当に?」


「うん」


「は、恥ずかしい…、あんまり見ないで下さいよ…」


「何で?久しぶりなんだからいいじゃない」と、颯真は美咲をからかう。


「先輩にはいるんですか?そういう人……」


「俺はね、一度傷つけて、やっと自分の気持ちに気が付いた。だから今度は、その子の幸せを一番に考えてあげたいかなって…」


 颯真はそう言って、美咲にニッコリと笑った。


「でも、手遅れでないのなら、俺のものにしたいと、本心では思ってるけど」


「そうなんですね。大丈夫です。先輩は素敵な人だから、きっと、その子も振り向いてくれますよ」


「そうなら、嬉しいけどね。現実は、なかなかうまくいかないんだよ」