意地悪な兄と恋愛ゲーム


「えっ?」


「店、覗いてたみたいだけど……」


 颯真は、美咲の背後にある白い壁を見上げる。


「このお店、ケーキ屋さんなんですけど、美味しいって有名なんです!」


「あぁ、確かにいつも女の子で賑わってるよね。美咲ちゃんも来てみたんだ?」


「そうなんです!」


「中、入らないの?」


「あ、えっと…」


「誰かを待ってるの?」


「ひ、一人ですけど……。今日はその、持ち合わせがなくて……」


 美咲が正直に白状すると、颯真はプッと吹き出して笑った。


「それで、ガラス越しに覗いてたんだ…」


 恥ずかしさのあまり、美咲の頬はカァッと赤くなった。

 まさかこんなところ、よりにもよって、何年ぶりかに会った颯真先輩に見られるなんて!


 うわぁ、最悪……


「ねぇ、美咲ちゃん?」


「は、はい…」


「俺さ、今ちょうど、甘い物食べたいって思ってたところなんだよね」


「えっ…」


 俯いていた顔を上げると、颯真はニコリと笑って美咲に言った。


「男一人で入るのも抵抗があるし、良かったら美咲ちゃん、俺と一緒に入ってくれない?」


「え!で、でもっ…」


「心配しなくても、俺が奢るよ?」


 もしかして、私が入りたそうにしてたから、先輩、気を遣ってくれた……?


「あ、ありがとうございます」


「うん、行こう」


 颯真の優しい気遣いに戸惑いながら、美咲は素直に頷いた。