「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
入るなり、店員の元気な挨拶。
「二人です!空いてますか?」
真由が見せつけるように、俺の腕を握る手にギュッと力をいれた。
近くに座る女の子の集団が、一斉にこちらを向き、ヒソヒソと話し始めた。
美咲も颯真も揃って俺を、女の子を手玉に取るのは朝飯前みたいな言い方をするけど…
俺だって、見世物みたいな扱いを受けるのは苦手だ。
居心地の悪さがたまったもんじゃない。
「すいません。只今満席で…。店内で待たれますか?」と言われ、ホッとしたのも束の間、奥の方にいる美咲達の隣の席の客が2人、席を立つのが見えた。
「あっ、今、席が空きそうですので、しばらくお待ち下さい」
「良かったね!晴斗君!」
「そう、だね…」
良くない。悪い予感しかしない。
そして、案内された先で、予感は的中する。
「おっ、お兄ちゃん!?」
「真由!なんで!」
そして、美咲の驚いたような視線が真由、そして掴まれた腕を通って、俺に突き刺さっている。
「そっちこそ、何でいるの?っていうか、誰その人、お兄ちゃんの彼女?」
「違うよ。俺の中学時代の後輩。ごめん。何となく分かってたけど、美咲ちゃんは晴斗の妹で、あってるんだよな?」
美咲の目が、更に大きく開かれる。
えっ、晴斗と先輩が知り合い?
何で晴斗が、先輩の妹と一緒にいるの?
そんな、酷く動揺した目だ。
俺だってこんな偶然、逆に知りたいくらいだ。
何で、美咲の好きだった相手が、よりにもよって颯真なんだよ。
何で、俺の知らないところで、二人きりで会ってるんだよ。
「ふぅん。そうなんだ。晴斗君の妹さんって、あの日の夜、晴斗君が慌てて会いに行った相手なんでしょ?席、隣とか最悪なんだけど…」
気まずい空気。
やっぱりさっきは無理にでも、店を変えてもらうんだった。
晴斗はため息をついて、額を手のひらで覆った。

