「初恋か…」
そうだよな。
初恋って、特別だよな…
今、自分も美咲を好きだから分かる。
いつも心の中にはその人がいて、この先の人生で他の誰かを好きになったとしても、その人を想っていた頃の自分自身を生涯忘れる事はないんだろう。
苦しくも幸せで、焦れったくて、儚い恋。
俺がどんなに美咲を好きで、美咲もいつか俺を好きになってくれたとしても、美咲の初恋を奪ったのは颯真で…
その事実は、どうやっても覆らない。
それが、悔しい。
無意識に握り拳を作ったところで「晴斗君!」と声をかけられた。
息を切らして現れたのは、今日の待ち合わせの相手、颯真の妹の真由だ。
「ごめんね!晴斗君、待った?」
「いや、今来たところだよ」
「本当?良かった!今日に限って成績の事で担任に呼び止められちゃって…」
「大丈夫だったの?」
「大丈夫、大丈夫!それにしても、すっごいオシャレなカフェだね!超かわいい〜!」
真由が目を輝かせながら、携帯でカフェの外観の写真を撮る。
「晴斗君、早く入ろ!」
「あ、あのさ真由ちゃん。ここ、今日は人いっぱいだし、違うお店にしない?」
颯真と美咲が一緒にいるのを目撃してしまった今、平常でいられる自信が全くない。
晴斗の提案に、真由はあからさまに悲しそうな顔をした。
「晴斗君、どうして?このお店、気に入らなかった?」
「そういう訳じゃないけど…」
「じゃあ、お願い!晴斗君から、この間の約束、守れなかった埋め合わせしたいって連絡があって、真由すっごく嬉しかったの!それでこのお店、晴斗君とどうしても行きたくて…。いっぱいで座れなかったら諦めるから、一回、中入ってみていい?」
女の子特有の上目遣い攻撃をされる。
こういうのは慣れてはいるし、あしらい方も分かってるけど、相手は友達の妹で、事情があったにしろ、あの日、真由との約束を破ったのは自分だ。
自分の為にも真由の為にも、今日でちゃんと借りを返しておきたい。
「分かった…」
「良かった!行こ!」と、笑顔で腕をとられ、晴斗は真由と入店した。

