意地悪な兄と恋愛ゲーム





 ある日の部活帰り、晴斗はカフェの前で、とある人物と待ち合わせをしていた。

 
 そのカフェは、最近出来たばかりだという人気店で、学校でも女の子達が噂しているのを聞いた事がある。


 中でも、苺のショートケーキが評判で、平日でも夕方には売り切れてしまうのだとか…


 ピカピカに磨かれたガラスの窓から、そっと中を覗いてみる。


 確かに店内は、女の子やカップルで賑わいをみせている。

 
 その中に、よく見知った横顔を見つけた。


 美咲だ。

 美咲がいる。


 思わぬ偶然に胸が高鳴る。

 けれど、次の瞬間、美咲の目線の先にいる人物を見て衝撃をうけた。


「え…、颯真?」


 晴斗のサッカー仲間で、他校の友人でもある颯真が、美咲の前に座っていたからだ。


「何で…」


 晴斗の脳裏に、ここ最近、美咲と交わした言葉が思い浮かぶ。


『別に普通だよ。中学が一緒だった、一つ上の先輩ってだけ』

『分からない。中学は一緒だし、あんまり離れてないとは思う。友達が最近、駅前で先輩に会ったって言ってたし…』


 そして、美咲が大切に持っていた学ランのボタン。


『先輩の卒業式の日に、思い出にもらったの』


 颯真が、今着ている学ランと重なって見えた。


 そう言えば、颯真の家に行ったあの日、颯真は俺の妹の事を聞いてきて、最後に何かを言いかけてた。


『なぁ、お前の妹ってもしかして…』


 全てが繋がった気がした。


 二人は顔見知りで、美咲が中学の時、好きだった相手は、颯真だったのか…


 今、目の前で、颯真相手に楽しそうに笑う美咲は、時折、頬を赤く染める。


 あの顔は、ただの先輩に向ける表情じゃない。


 美咲は、やっぱりまだ、颯真の事が好きなのかもしれない。


 それを目の当たりにしてしまったら、胸が押し潰されそうなくらいギュッと苦しくて、切なくて堪らない。


 美咲がいつも、「もう好きじゃない」と否定してくれる事が救いだったんだと気付かされる。