「先輩、部活前に呼び出したりしてすいません…」
しばらくすると声が聞こえてきて、美咲は息をひそめた。
建物の影からそっと様子を伺うと、四メートル程先に目的の二人、晴斗とサッカー部のマネージャーの女の子が立っていた。
「いいけど、こんなところに来て、足は大丈夫なの?」
「はい。もうほとんど治ってますから」
「そっか、良かった。でも、まだ無理はしちゃ駄目だよ」
「先輩、やっぱり優しいですね…」
彼女の嬉しそうに微笑む反応を見て、美咲は「騙されるな!」と伝えたいのを必死に堪えた。
「部活の帰りはいつも家まで送ってくれて、ありがとうございました。先輩、疲れてるのに…」
「俺が怪我させたも同然なんだし、奈々はそんな事、気にしなくていいんだよ」
晴斗は優しい笑みを浮かべて、彼女を気遣う。
奈々と呼ばれたマネージャーの子は、頬を染めながら本題を切り出した。

