意地悪な兄と恋愛ゲーム



 その時、携帯電話が音をたてた。

 それは、晴斗のポケットの中でなっていた。


 晴斗は美咲の腕を離すと、冷静に携帯電話を取り出し、通話ボタンを押した。


「はい…」


『晴斗君!?』


 電話の向こうから聞こえてきたのは、慌てたように晴斗の名を呼ぶ女の子の声だった。


「真由ちゃん…」


『晴斗君!さっきは慌てて出て行ったから、心配してたんだよ!?』


 さっきまで高鳴っていた美咲の胸は、シュルシュルと風船のように萎んでいった。

 その変わりに、真っ黒な感情が胸の内を覆っていく。


『荷物も持たずに飛び出して行っちゃったから。何があったか分からないけど、大丈夫だったの?』


「うん、大丈夫だよ」


『そっか、良かった…』


「荷物はまた今度取りに行く。心配かけてごめん…」


『ううん、いいの。…ねぇ、晴斗君?また、来てくれる?』


「分かった。またね…」


 何もないように電話を切る晴斗に、美咲は苛立ちを抑えきれなくなる。


「ふぅん…。友達の家に泊まるって、女の子の家でお泊まりだったんだ…」


「友達は男だよ。今の子は、その人の妹ってだけ…」


「その子は、だけって感じ、しなかったけど?」