「だいぶ、乾いたかな?」
晴斗はタオルをとると、確認するかのように、美咲の髪を指で優しく、スルスルとすいた。
「うん、ありがとう…」
晴斗に触れられてると思うと、ドキドキした。
髪なのに、一本一本に神経が通っているみたいだ。
こんな気持ちになるのが自分だけだなんて、何だか悔しい……
「次は晴斗の番だよ?私が乾かしてあげる!」
「俺の?」
振り向いてそう言うと、晴斗が意外そうに顔を傾げている。
「うん、タオルかして?」
晴斗からタオルを奪い、髪を乾かそうとするが、晴斗は背が高すぎて、頭までうまく手が届かない。
「いいよ、無理しないで…」
「何かしてなきゃ、気が紛れないの。晴斗、床に座ってくれない?」
晴斗はおとなしく、その場に座って俯いてくれた。
美咲は、晴斗の前に立て膝をつき、晴斗の髪をワシワシと乾かした。
晴斗の髪は、もうほとんど乾きかけていたけど、何となくこうしていたくて、タオルを動かし続けた。
晴斗の髪は絹のような滑らかで繊細な黒髪。
しばらくすると、自分と同じシャンプーの匂いが香った。
途端に晴斗の色気が増して見え、身体同士の距離が近すぎることを意識してしまう。
いつも逃げてばかりいた晴斗に、自分から触れる日がくるなんて____
晴斗の小さな息遣いも、髪から香る匂いも、この身体に抱きしめられるとどんなふうに居心地がいいのかも、全て理解している。
私は、この人の温もりを知っている。
そしてさっきからずっと、それを求めている。
その長い指先で、もう一度髪をすいて欲しい。
力強い腕で抱き寄せて、温かい胸で守って欲しい。
誰でもいいわけじゃない
目の前にいる晴斗に、してもらいたい___
そう思った時、美咲はタオルを動かす手を止めていた。
私、今、何、この気持ち?
晴斗はもう、無理矢理触れないって言ったのに、何でこんなに期待してるの___?

