意地悪な兄と恋愛ゲーム


「晴斗の着替え、こっそり撮影しようと思ったの」


「俺の着替え?あの部室で?」


 晴斗は驚いたのか、手の動きを止めた。

 けれど、驚かれても無理はない。

 今考えると、何て軽率で馬鹿げた行動だったろうと、自分でも後悔の嵐だ。

      
「呆れられても仕方ないけど、必死だったの。家で待ってても晴斗とはすれ違ってばかりだし、部室なら私でも入り込めるチャンスがあると思ったから……」


「だからって、わざわざ忍んで、隠し撮りするなんて…」と、後ろから晴斗のため息が聞こえた。 


「……怒ってる?」


 今回の事はさすがに、怒りに触れたようだ。

 晴斗は「少しね」と強い口調で言った。


「誰だって隠し撮りなんかされたら、いい気はしないよね。ごめん…」


 謝る美咲に、晴斗は「そうじゃないよ」と言った。


「え?」


「今日、自主練に来てた奴らが何人かいたでしょ?」


 補欠組メンバーの事だ。 


「うん、その中に晴斗がいないって気付いて、その人達が帰るまでロッカーの中で身を潜めてたら鍵、閉められちゃって……」


「もし、美咲がロッカーにいる事を、あいつらに知られてたら、美咲はどうなってたと思う?」


「……すごく驚かれて、理由聞かれて、笑い物にされてた?」


「それならまだいい。あんなに狭い密室で、複数の男に囲まれて、もしかしたら雷以上の恐怖が美咲を襲ってたかもしれない。そういう可能性だってあるんだよ?」


 晴斗が何を言おうとしているのかに気が付いて、美咲は言葉が出なかった。

 実際に、隣のロッカーを開けられるなんて場面があったから、更にゾッとした。


「着替えならいくらでも撮らせてあげるから、もう二度と、そんな無茶しないで欲しい…」


 晴斗が、タオルごしの美咲の頭に、コツンと額を預けてくるのが分かった。


「美咲の身に何かあったら、俺、気が狂いそうだ…」


 その、消え入りそうな声に、心の底から心配してくれてるのが伝わる。


「…ごめん、もう、しない…」


 晴斗の気持ちに、胸が締め付けられる想いだった。