意地悪な兄と恋愛ゲーム



 晴斗の背中に、「着替え、終わったよ」と、声をかけた。
 

 晴斗は美咲に振り返ると、安心したようにニコリと頬を緩めた。


 そして、気が付いたように、指の先で髪に触れてくる。


「髪、濡れてるね…」


 晴斗は美咲が持っていたタオルを取ると、それを美咲の頭にかけた。


「乾かしてあげる」


「い、いいよ。晴斗だって髪、濡れてるでしょ?」


「俺は短いからすぐに乾く。でも、美咲の髪は長いから。ほら、後ろ向いて?」


 言われるがまま、美咲は晴斗に背を向けて立つと、晴斗は美咲の肩下まである髪をタオルで乾かし始めた。


「本当はドライヤー使えればいいんだけど、電気がないと不便だね」


「そうだね…」


 タオルごしにワシャワシャと動く、晴斗の手は大きい。

 自分でやるよりも、早く乾いているような気がする。


「ところで美咲は、そもそも何でサッカー部の部室にいたの?」


「えっ…」


 唐突に聞かれて、美咲は戸惑った


「また、誰かに何かを頼まれた?一体、あんなところで何をしようとしてたの?」


 けれど、晴斗が疑問に思うのは当然のことだった。

 正直に本当の事を話すしかないと、美咲は覚悟を決めた。