意地悪な兄と恋愛ゲーム


 晴斗の着替えが終わると、美咲の自室の前に二人は足を運んだ。


「俺は廊下で待ってるから、着替えてきて?」と、晴斗は美咲に懐中電灯を渡した。


 言われた通り、懐中電灯を手に持ち部屋に入る。


 真っ暗な自分の部屋の中。

 窓の外は、風に吹かれた雨がガラス窓に強く打ち付けていて、遠くの分厚い雲には依然、雷が光って見えた。


 ここはよく見知った自分の部屋だというのに、晴斗が隣にいないだけで恐怖心が胸を詰まらせ、入り口のドアを開けてしまう。


「美咲?」


 廊下の壁に背中をつけて待っていた晴斗は、すぐに部屋から出てきた美咲に驚いたような声を上げた。


「どうしたの?」


 美咲は俯きながら晴斗の手を黙ってひき、部屋の中に引き入れた。


「ここにいて…」


「でも…」


「いいからっ…」


 晴斗は、美咲の手が小さく震えている事に気が付き、「…分かった」と言って、美咲に背中を向ける。


「後ろ、向いてる」


 美咲は「うん…」と頷くと、手早く着替えを済ませた。