「この金網を立てられるとき、役所の人から説明を聞いたよね。」

「ああ、生物兵器なんだろ?」

「うん。」

亜季は頷いた。


「その症状が分かってきたの。発病すると高熱が出て、傷口から黒い発疹が出るらしいの。」

たどたどしくそう言う亜季の言葉に、テツオは小さく頷いた。


「そうか。だから体温が昨日より上がっていないか、確かめたってことか。」

テツオは薄明るくなりはじめた空を見上げながらそう言うと、亜紀に向かってはっきりとした口調で言った。


「うん。」

亜季は、小さく頷いた。