土門は新幹線の指定席に腰を下ろすと、小さく息を吐く。

そして多少体を揺さぶるように体勢を落ち着けると、革のカバンを足元に置いて左手にはめられた腕時計の針を見つめた。


それは初任給で買った思い入れのあるものでもあり、三年以上たった今でも大事に使っている。


「東京、二時には着くな。」

そう言って土門は両手をおなかの上で軽く組むと、窓の外を流れる景色をぼんやりと見つめる。


この路線が開通してから、東京までわずか3時間弱で着くようになった。

以前使っていた寝台列車よりも運賃は倍以上高くなったものの、土門のようにわずかな時間も惜しいビジネスマンには、かなり重宝する。


土門は、その恰幅のよい体にはやや狭いシートに、スーツの背中がシワにならないように注意しながら身を預けると、ふうっと息を吐きながら宙を見つめた。