「こんなにみんなが苦しんでるのに、月は変わらず輝いてやがる。」

その一言に、テツオの内心が垣間見えた。


何もできなくて。

ごめんね。


亜季はその顔を、何も言えないまま黙って見つめた。


「この同じ月を見ながら、亜季が夢に向かって頑張ってるんだなあ、ていつも思っていた。」

そんな純粋なテツオの言葉に、亜季の胸は鈍く痛んだ。


自分は東京でそんな思いに耐えられるような、たいそうな生活など送ってなどいなかったよ。


ごめんなさい。

ごめんなさい。


亜季は心の中で、何度もそうつぶやいた。