「医学部の尾上って奴が、止血してくれたんだ。」

「そう…。」

亜季とテツオは、大勢いる線路付近を避けて、誰もいない林の中の忌々しい金網を挟んで話していた。


たった二人きりで、夜の暗く繁った木々の下にいることは、亜季にとって正直怖かった。

その木々のこすれる音は、今にも自分に襲い掛かってきそうに思えてくる。


しかしそれでも亜季は、テツオとは離れたくなかった。


目の前にいるテツオは、腕を失ったときの失血のせいであろう、明らかに青ざめていて心配でもあった。

そんな亜季の気持ちを知ってであろうか、テツオは心配かけまいと話し続けた。