亜季は叫んだ。


自分でも何を言っているか分からない悲鳴を上げ続けた。

涙でぐしゃぐしゃになった顔を何度もかきむしりながら、亜季は崩れ落ちそうになった。


テツオは大丈夫であろうか。


亜季は今にも卒倒しそうになりながら、そのバリケードの終わりを探して、薄暗い中を金網沿いに歩いた。

必死にテツオの姿を探して、何度も何度もその名を叫んだ。

しかしその声も、脱出しようとむなしい努力を続ける民衆の声にかき消され、いつしか亜季の心に諦めの気持ちが支配し始めた。


「テツオ…。」