沈みかけた太陽を背に、亜季は熱せられた線路の枕木を飛び移るように必死に走る。

何度もつまずき、砂利にも足をとられたが、懸命に体勢を立て直しながら走り続けた。


毎日その上を走っていた列車が止まってしまった今、この二本の足を頼るほかは無い。


一体、何時間走ったであろうか。

そう思った時、焼けるように痛む肺と、苦しく締め付ける心臓の痛みに耐えながら走る亜季の足は止まった。


彼女の目には、絶望的な光景が映った。


亜季の目の前一面には、高さ三メートルほどもある緑色の金網がそびえ立っている。

その金網のワイヤーは太さが三センチ以上あり、それは人の手では切れるものではない。


そのワイヤー同士の隙間も、わずか三センチほどしかなく、とてもではないが足をかけて上ることなども出来そうになかった。