「政府は緊急閣議を招集し、病原菌拡大を防ぐため、都市全体を金網で隔離をすることを決定いたしました…。」

亜季は耳を疑った。


衝撃を受けている亜季の目の前では、非情な情報が映し出されていく。

先ほどの地図上に金網設置位置が油性ペンで書かれ、その範囲は明らかにテツオの大学を含んでいる。


「なんてことを…。」

あまりに残酷な現実に、泣き崩れて自分に身を預けてくる姪の肩を、伯父は震える手で優しく抱くことしか出来なかった。


伯父も長い間生きてきたが、これほどにまで残酷な出来事は経験したことは無かった。

いかに感染力も毒性も分からない病原菌の拡散を防ぐという理由からとはいえ、あの忌まわしい戦時中ですらこれほどまでにひどい政策は無かった。


「おじさん。」

「なんじゃ?」

自分の胸で涙を流す姪の問いかけに、伯父は出来うる限りの優しい声で聞き返した。