やがてホームに停車した列車に、テツオは乗り込んだ。

そして四人掛けの座席の一つに座ると、がたがたと音を立てて窓を開ける。


それに気がついた亜季は、列車のそばまでそそくさと歩み寄った。


「じゃあ、また今夜な。」

「うん、わかった。」

亜季がそう言って軽く手を振るのを合図にしたかのように、乗車口の扉が閉まった。


「まもなく出る。危ないから離れて。」

「わかってるよ。」

そう言って亜季が一歩下がると、列車はゆっくりと動き始める。

その車体を、亜季はただ見送ることしか出来なかった。


見送るのがこんなにも切ないことなんて知らなかった。