これほどの変化を、亜季は18年間もかかって何一つ気がつくことができなかった。


亜季は小さくため息をつくと、黒のトートバッグから一個の白球を取り出した。

そこにはこう書かれている。


(まず一歩)


これを受け取ったときは、その意味をろくに理解してなかった。

東京に向かおうとしている自分こそが、一歩踏み出しているものだと思っていた。


でもそれは、逃げていただけだった。