亜季はアルバイトが終わって部屋に戻ると、そそくさと荷物をまとめ始めた。

とりあえず、2、3日帰るだけのつもりなので、着替えは最低限に抑えてバッグにつめる。


でも喧嘩して出てきた実家の敷居をくぐる勇気が自分にあるのか、まだ亜季自身にも確証がなかった。


亜季がアパートを出ると、緑が繁った桜の枝の間から、朝にも関らず夏の熱い日差しが一斉に振りそそいできた。

その日差しによろめきそうになりながら、亜季は手をかざして空を見上げた。


こんな風に真正面から空を見上げるのは、一体いつ以来だろう。


よく考えると一年以上すんでいるというのに、、駅に向かう一番街にある書店も、コンビニエンスストアすらも、っかりとは見たことがなかった。

今までこの街に息づく人々の温もりに触れようとしていなかった。


背を向けていた。