「田舎の話になると口を閉ざすんだもの、亜季ちゃん。」

「…。」

亜季は何も答えられなかった。


まりは、亜季の心中に潜む悩みに気がついていた。

「東京に出てきたことに、後悔する時があるんでしょう?」

「…そうかもしれません。」

亜季はまりの直接的な問いに、憮然として答える。


「私にもあったな。」

「まりさんでも?」

「もちろん。」

東京で自分の目標に向かってまっすぐに生きていると思っていたまりでさえ、そのような時があったことに亜季は驚いた。

それは同時に、亜季の心を押しつぶしていた重石を取り除いてくれた気がした。


「今の亜季ちゃんなら、きっとふるさとの良さが分かるはず。」

「そうでしょうか。」

「そう。そしていっぱい力をもらって、またもどってきたらいいじゃない。」