「見送りに来た。」

「頼んだ覚えは、ないんだけどね。」

亜季は意地悪そうに、大柄で朴訥としたテツオに向かって、そう憎まれ口を叩いた。


「どうしても行くのか。」

「うん。」

テツオの問いに亜季はそうきっぱりと言う。

そして、再びさえぎるもの一つない青空を見上げた。


「東京に行けば、いろんなものがある。こんななにもない所にいたって、何も起こりやしないし。ただ時間が過ぎるだけで変化もない一生なんて、私はまっぴら。」

そうずけずけと言う亜季の言葉を、テツオは真面目な顔で見詰めながら何も言わずに聞いていた。


そんな級友の様子を見て、亜季は小さく溜息をつく。

テツオはしばらくの間考え込んでいた。

やがて、意を決したかのように何かを言い返そうとしたとき、地平線の向こうまでまっすぐ伸びる線路の向こうに、列車が姿を現し始めた。


その姿は徐々に大きくなってくる。