「すごいご馳走!」

「いえ、大したものじゃ…。」

小さなテーブルの上に並んだオードブルを見て感嘆の声を上げるまりに、亜季は恥ずかしそうにそう答えた。


「いや、すごいよ。ありがとうね。」

「いえ、お口に合うか分かりませんが…。」

「一生懸命、作ってくれたことがうれしいのよ。」

そう言う先輩の気持ちが、亜季にはこの上なくうれしい。


仕事上だけではなく、プライベートにおいてもさりげない気遣いが出来るまりに対し、亜季はもはや明確な羨望の思いを抱いていた。


まりはテーブルの前に正座をすると、目の前の開かれた窓から外を見て言った。


「しかしこの部屋、桜通りの桜、よく見えるんだね。」

「この通り、桜通りって言うんですか?」

テーブルを挟んでまりの向かいに座った亜季は、後ろの窓を振り返りながら見てそう尋ねた。