アルバイトを始めて、１週間が過ぎた。


亜季は仕事にも慣れ、ようやく目まぐるしい東京の生活に慣れてきた。

そこでお礼の意味も込めて、アルバイトを始めるきっかけになった先輩社員のまりと休みを合わせ、自分の部屋へと招待した。


まもなくやってくるであろうまりを精一杯もてなすべく、慣れない手つきで作った料理をテーブルに並べると、亜季は窓の外を眺める。

６時を過ぎて暗くなった空の下、目の前に立ち並ぶ桜は街灯に照らされ、鮮やかに浮かび上がっていた。


そのはっとするほどの美しさを見たら、きっとまりも喜んでくれるに違いない。


ピンポーン。

玄関の呼び鈴が鳴った。


「どうぞー。」

「あ、開いてたんだ。」

そう言うと、まりはドアを開けた。


その姿を確認すると、亜季は飛び出すように玄関に駆け寄った。