亜季はスーパーで買った小さななべと茶碗、そしていくつかの食材が入ったビニール袋を両手に持ちながら、日が暮れかかった路地をぼんやりと歩いていた。


何か全てが夢のようである。

明日からかっこいい先輩店員や有能そうな店長たちと、明るいファミリーレストランで一緒に働くことが出来るなんて、正直いまだに信じられなかった。


亜季はうっすらと夜の帳が落ち始めた空を見上げて、軽く伸びをした。

頭上に広がる東京の空は、亜季が田舎で想像していたよりも、はるかに綺麗であった。


亜季が東京に出てくるとき、多くのクラスメイトが、東京はすさんでいるところだとか、人情のない寒々したところだとかしきりに言っていたが、そんなことはない。

この空や、あの店員たちの姿を見せてあげたいくらいだ。