しばらく文字だらけのページを見つめていたが、やがて亜季は小さくため息をついてその求人誌を閉じる。

そしてぼんやりと席の横に開いた大きな窓の外の景色を眺めると、目の前の街道をクラクションを鳴らしながら走り抜けていく車の群れを見つめた。


その交通量の多さを見ると改めて、東京の人口の多さを実感する。


「お待たせいたしました。」

突然横からかけられた声に亜季が慌てて振り向くと、そこにはオレンジ色のかわいらしい制服を着た女性店員が立っていた。

亜季のその動作があまりにも急だったので、その女性店員は一瞬驚いたような表情を浮かべた。

しかし、すぐににっこりと笑うとテーブルの上に鉄板に載っていい匂いをさせているハンバーグステーキやライスなどの皿を丁寧に置き始める。


そのさりげない落ち着いた対応に、亜季は尊敬に似た感情を覚えた。

恐らく自分なら、こんなにうまく人と接することは出来ないであろう。