「僕にはよくわかりませんが、ここに行くことを励みに頑張っていました。今度はあなたにご馳走してやるんだと・・・。」


亜季は恐る恐る尾上に近づくと、その箸袋を震える右手に取った。

「こんなものを…。」

そう言うと亜季は、それを大事そうに胸に抱え込んだ。

ただの紙切れでしかないのに、そこからは確かなテツオの温もりが伝わってくる。


「なんでよおおおおお!」

亜季は泣いた。

泣き続けた。


心から湧き出すものを抑えきれなかった。

人を想うって、痛い。



そんな亜季の背中を、熱い夏の太陽が寂しそうに照らし続けていた。