金網の向こうは、凄惨な光景であった。


人が通れるほどの通路を取っているほかは、一面の布で覆われた「何か」が地面を覆いつくしていた。

その一体一体にまかれた布を震える手でめくりながら、民衆はただひたすらに、家族や友の生死を確認するために歩き続けた。


しかしその民衆の中には、亜季の姿はなかった。