翌朝、尾上はベッドに顔を伏せたまま、目を覚ました。どうやらあのまま寝てしまったようだ。


「起きたかね。」

後ろから声をかけられ、尾上が驚いて振り向くと、そこには北村と看護婦が一人立っていた。


「北村先生…。」

「薬が効いているといいな。」

不安そうな顔の教え子を安心させようと、北村は精一杯の穏やかな表情を作った。


しかし、成功している保証などなかった。

ほかならぬ北村自身が、不安に押しつぶされそうであった。