真夜中、尾上はテツオの枕元で座りながら、ずっとその大きな左手を両手で握り締めていた。

テツオの精気に満ちた雰囲気はその顔からは消えうせており、黒く窪んだ瞳はずっと閉じられていたままだった。


「なあ、テツオ。」

尾上は何も答えないテツオにそう問いかける。

それはかすれてほとんど聞き取れないほどの大きさであったが、静寂に満ちた部屋でははっきりと聞き取れる。


「生きてくれよ。」

うめくように、尾上はそう呟いた。

そして、テツオの手を引き寄せると、自分の額に当てた。