「皆さん、見てください。自衛隊のヘリコプターが、北へと飛び立っていきます。」

アナウンサーが絶叫するテレビモニターの映像は、数百にも及ぶヘリコプターが、薄闇に染まり始めた大空へと今まさに飛び立った瞬間であった。

その待ちかねた光景に、亜季の眼は涙で一杯になった。


(よかった…。)

ありがとう。亜季はそうつぶやいて、ふと思った。自分の人生の中で、こんなにも人に感謝したことはあったであろうか。


伯父の優しさ。

尾上の真摯な態度。

飛び立つ自衛隊の隊員たち。


そしてテツオの精一杯の強がり。


その全てがありがたいと思った。


それと同時に、今までたった一人で生きてきた気になっていた自分を恥ずかしいと思った。


人は一人でなど生きられるはずはないのだ。