「このままにしておくと、政権が危ないな…。

「何言っているんだあ?あんた!?」

大隅の独り言を、誰かが背中から頭ごなしに否定する言葉に、大隅の怒りは急速に沸点に達した。


「何だ!お前は!」

振り向いた先に立っている、この上もなく無礼な警備員を大隅はどなりつけた。しかし男は全く動じない。


「あんたに言いたいことがあって、警備員に変装して入り込んできた。」

そう言って帽子を脱ぎ捨てると、その顔が明らかになった。

20歳そこそこくらいの男であろうか。意外な素顔に、大隅は多少の驚きを覚えた。


「無礼者!こちらは大隅総理大臣であるぞ!」

「まあ、いい。下がっておれ。」

多少時代錯誤的な言葉を吐く長官に対し、大隅はそう言って下がらせた。

そして、その青年のもとに歩み寄ってその顔を覗き込んだ。