それら痛ましい遺体の横では、多くの人々が必死によじ登ろうとして金網に手をかけている。

だが、そのあまりにも太い金網の形状に、誰一人成功しなかった。


激しい頭痛に襲われてよろめいたテツオの視界の奥に、何人かの人影が映った。

それは二層の金網の向こうで家族の名前を叫び続ける民衆の向こうに見え、その軍服にも似た制服は、明らかに辺りの人々とは異彩を放っている。


やがて弱りきった民衆の中で歓声が上がった。


テツオが民衆の視線を追うと、そこにはフックのついた長いロープを持った男性の姿があった。


テツオと同じくらいの年齢であろうか。


その男はカウボーイのようにそのロープを投げ縄のように振り回すと、高く聳え立った金網に向かって投げる。

それは何度か金網に跳ね返されたものの、ついにその上の端にフックが引っかかった。