そして、診察室の扉に手をかけようとしたとき、尾上がその背中に声をかけた。


「おばあさん。出て右に病室があるから、傷の痛みが治まるまで休んでいってください。」

老婆はゆっくりと振り返ると、小さく礼をして診察室を出て行った。


テツオは時折痛む右腕を押さえながら、ひどく心が沈んだ。

尾上がすでに一杯になった病室を案内するのは、「病原菌発症の兆候がある患者のみ」なのだ。



つまりあの老婆は近日中に、死ぬ。