大学病院にやってくる負傷者は、日に日に増え続けた。


尾上の診察室の前には、数百人にも上る列が出来ていた。

それは二次感染を恐れた多くの医師や医学生が、隔離されたこの町の中でも被爆地よりはなれた地域に非難したため、慢性的な人員不足に陥っているせいもあった。


そのため、尾上やその師である北村に、休む暇などあたえられるはずもなかった。


「てめえら、職務放棄して逃げやがって!」

尾上が診察する二階の窓の下では、診察を待ちかねた民衆たちの怒声が時折響き渡る。


最初、残されたわずかな医師や医学生は、傷ついた患者の体への負担を少しでも軽減するため、一階の入口そばの事務室を利用して診察を行っていた。

しかし沸き起こる怒声や投石に耐えかね、やむなく二階で診察することに変えたのだ。