「もういい。何も言うな。」

テツオはたまらず、尾上の言葉を遮った。


尾上は視線を移すと、外野グランドをきっと睨みつけた。

「これ以上、犠牲者は出したくない。」

歯を食いしばりながらそう言う尾上の言葉に、テツオは大きく頷いた。


「そうだな。俺に出来ることがあったら言ってくれ。何でもする。」

「分かった。何かあった時は頼むよ。」

尾上はそう言って右手を出しかけて、慌てて左手を差し出した。


テツオはにっこり笑うと、今はもうない利き腕と逆の手で、しっかりとその手を握った。