「大丈夫か。」

あまりの憔悴振りに、思わずテツオはそう声をかけた。


しかし尾上は無視するかのようにテツオの左横に座ると、ぼそりとつぶやいた。


「あの外野グランド、見たか?」

「ああ…。」

尾上の問いかけに、テツオの表情が曇った。


尾上はぐっと歯を食いしばると、両肘を両膝において身をかがめ、じっと湿った地面を見つめた。


「最初は数名だった。」

尾上は俯いたまま、そう呟いた。


その追い詰められた横顔を、テツオは心配そうに見つめる。


「それが数時間後には、何百人もの発症が見られ、一日たつと多くの死者が出始めた。」

「…。」

テツオは何も答えられなかった。