翌日、テツオは朝もやに霞む大学の野球グランドに呼び出された。

テツオは時折うずく右手の傷を押さえながら、懐かしい土の香りのする一塁側ベンチに腰を下ろした。


つい3日前までは、このグランドでただひたすらに白球を追いかけていたのだ。

そして、その毎日が、ただただずっと続くものだと思っていた。


しかし数日振りに来たグランドは、そんな記憶とはかけ離れた凄惨なものと化していた。


外野のフェンス沿いには、白い布にくるまれた何かが、何百も並んでいた。

誰の目にも、それら何であるか、遠目にも何か分かった。


テツオはこみ上げてくる嘔吐感をこらえ、目をそらした。


「待たせたな、テツオ。」

テツオが顔を上げると、目の前に白いポロシャツを着た尾上が立っていた。


その顔は、昨日よりもさらに疲労の色が濃かった。