北村はゆっくりと振り向くと、眉間にしわを寄せた険しい表情で、尾上をじっと見つめた。


「じゃあ、君は…。他に方法があるとでもいうのかね…。」

「…。」

その問いに、尾上は何も答えられなかった。


そう、尾上にも分かっていた。

今のように患者を診察し続けているだけでは、何の解決にもならないことなど。


尾上は無言で礼をすると、研究室を出て行った。


北村はその後姿を無言で見送ると、ふらふらと革張りの椅子に座り込み頭を抱えた。


未知の病原菌に、北村はなす術もなかった。

もう他には方法は、ない。