年に一度、丘の上の神社で行われていた村祭りの人だかりでさえ、この行き交う人々の多さと比べると比較にならない。


亜季はその小さな体には不釣合いなくらいの大きな旅行カバンから、ルーズリーフをちぎって走り書きをした一枚のメモを取り出した。

そこには、目的地まで行く電車の乗り換え順が書いてある。


初めて東京にやってくる亜季は、雑誌であらかじめ目的地までの経路を調べていたのだ。


「中央線…は…。」

亜季は立ち止まると、多くの人が行き交う連絡通路の天井につけられた看板をじっと見つめた。


その矢印の方向を見ると、どうやらまっすぐ行った突き当たりの階段を上るようだ。


まだ朝もやにかすむホームに降り立った亜季の頭は、あまりの人の多さにくらくらとする。