北村は疲労感に落ち窪んだ目を外に向けたまま、ぼそりと言った。


「検体を探してくれないか。」

「!」

尾上はその言葉に、思わず言葉を失う。


その北村の言葉の意味は、尾上には分かりすぎるほど理解できた。

だからこそ、何も答えられなかった。


検体…。そう、北村は様々な薬を試す患者を探して欲しいというのだ。


しかし未知なる病原菌を駆逐するためには、危険な薬品も試さざるを得ないであろう。

もちろん検体になった衰弱した人の命の保証はない。


尾上は勢いよく立ち上がって、目の前のデスクを手のひらで叩いた。


「北村先生!私には…、私にはとてもではないですが、検体を探すことなど出来ません!だって…。」

「じゃあ、君は!」

北村は窓の外を眺めたまま、強い口調で再び尾上の言葉を遮った。


そのあまりの勢いに、尾上は圧倒されて黙り込んでしまった。